修理できないなんて誰が決めた?3Dプリンターで挑む農機具修理

はじめに

約20年間、忠実に働き続けてきた我が家の精米機。米ぬか排出部の溶接が剥がれるというトラブルに見舞われました。大きいので農機具店への運搬も一苦労ですし、出張修理となれば費用も馬鹿になりません。「まだまだ使える機械を、こんな理由で買い替えたくない」-そんな思いから始まった、3Dプリンターでの修理への挑戦をご紹介します。
溶接ができないので、それ以外の道を模索しました。

問題解決までの道のり

当初は「溶接でしか直せないのでは?」という固定観念に縛られ、2週間ほど解決策を見出せずにいました。しかし、「既存の修理方法に縛られる必要はない」という発想の転換から、3Dプリンターでの修理にチャレンジすることに。どうやって直せばいいかパートさんと雑談していて思いつきました。人に話すって大切ですね。

こんな風に溶接部分が綺麗に剥がれてしまいました。穴が開かなくて良かった。
溶接機を買えば解決しますが、このためだけに購入するのは・・・つらい。

試作品の製作

1回目の試作では、シンプルなバンドを作成し、内側にゴム板を貼り付けるアプローチを試みました。ゴムを付けたのは滑り止めとスキマ調整です。
しかし、強度不足により数分で破損しました。この失敗から得た教訓を活かし、改良版の設計へと進みました。

改良版での成功

2回目の設計では以下の改良を実施:

  • バンドの厚みと幅を大幅に増強
  • M5ボルト2か所での確実な固定方式を採用
  • ゴム板レス化による構造の単純化

なぜPET-Gを選んだのか?

PET-Gは3Dプリンター用フィラメントの中で以下のような特性を持っています。

  • 耐衝撃性:PLAと比べて格段に優れた耐衝撃性
  • 耐熱性:使用温度範囲が広く、80℃程度まで安定して使用可能。PLAは60℃程度
  • 柔軟性:適度な柔軟性により、振動や衝撃を吸収
  • 化学的安定性:油や薬品への耐性が比較的高い

機械特性がPLAより高く、ABSより扱いが容易であるため、3Dプリンタの部品にもPET-Gは使われています。

製作データ

  • 設計時間:1時間
  • 造形時間:5時間
  • 使用材料:PET-G(赤色)
  • 固定方式:M5ボルト×2

設計データを無償公開します

オープンアグリテックの精神に基づき、設計データを無償公開します。
Autodesk Fusionの設計ファイルも公開しますので、ご自由にカスタマイズください。
https://www.printables.com/model/1201795-rice-mill-dust-collector-pipe-repair-band

この修理から学んだこと

  1. 技術より発想が重要
    従来の修理方法にとらわれず、新しい技術を柔軟に活用する発想力が問題解決の鍵となりました。
  2. サステナビリティの実践
    修理部品の入手が困難な機器でも、3Dプリンターを活用することで、まだまだ使える機械の寿命を延ばすことができます。これは、モノを大切に使い続けるというサステナブルな考え方の実践でもあります。

おわりに

「修理できない」と思われていた問題も、視点を変えることで新しい解決策が見つかることがあります。今回の修理経験は、3Dプリンターという新しい技術と、「なんとかして直したい」という思いが結びついた、良い例となりました。